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yuuの一人芝居

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星に願いを 2

星に願いを 2

ラルが大きくなって羊の毛を荷馬車に乗せて村まで売りに行った時でした。二頭立ての真っ赤な馬車が通り過ぎていくのに出会いました。窓に一人の少女が窓枠に凭れてラルの方を見ていたのです。目があってラルは何か悪いことをしているような思いがしてそらしました。少女は寂しそうな目をしていたのです。
「おかわいそうにのう、王様のお父さんがなくなられ後を追う様にお母さんも亡くなられて・・・」
 村人はそんな言葉を地面に落とし膝を折って合掌しました。
 ラルは少女がお姫様であることを知りました。あの寂しそうな目は両親と別れたからなのだと言うことが分かったのです。
 ラルは帰っておじいさんに話しました。
「人には定めというものがあって未来が決まっておるのじゃ。これは産まれてくるときに神様と約束をしていることで幾ら変えようとしても変えられないものなのじゃ」
 と言いました。
「僕はこの山で一生羊飼いをして暮らしたい」
 ラルはそう言いました。
「それがお前の希望じゃが、さてそのようになるかどうかはもう決まっとる。人はその決まっている通り生きていくのじゃが、それに流されてはいかん、流れるのじゃ」
「流れる・・・」
「そうじゃ、流されると流れるは大きな違いがある、流されることはたやすい生き方、流れることは勇気のいる事じゃ。いずれラルにも分かると時がくるじゃろう」
 ラルは羊を連れて季節季節でところを変えて山を渡りました。ラルは少女の事が忘れなれなくなっていました。
「あの方がどうか幸せになりますように」と満点の星空に祈りました。おじいさんに幸せな時には星を見ないように言われていたのですが、このときには自然に祈っていました。
「ラル、私は病気なの。もう長くは生きておられないわ。馬車からラルを見たとき何とりりしくすがすがしいのかと思ったわ。たったひとときなのにラルのことが忘れられなくなってしまったの。ラルの綺麗に澄んだ瞳を思い出すと死ぬのがとても辛いわ。病気で重たい体を引きずるようにして何度出会った場所へ行ったかしら。もう一度ラルに会って見たいと思わない日はないの」
 そんな夢をラルは見たのです。
 次の日ラルは出会いの場所に出かけました。人混みの中を探して歩きました。会うことは出来ませんでした。次の日もまた次の日もラルは村に出かけたのでした。
「ラル、どうしたのじゃ、羊がお腹を減らして啼いておるのがわからんのか」
 おじいさんに言われてもラルの耳には届きませんでした。
「おかわいそうに、あのラッパはお姫様が亡くなられたの知らせじゃ」
 村人が涙を流して言っているのをラルは聞きました。
 村は静まりかえっていました。
「ラル、会えたわ、そんな悲しい顔をしないで。私はラルに会うために産まれてきたの。会えたのですもの満足よ」
 少女はあのときの寂しそうな目でなくきらきらと輝く瞳をして言いました。
 ラルの心の中にははっきりと少女が生きていました。そのことをおじいさんに言いました。
「ラル、人は亡くなっても魂はいつまでも生き続けるものじゃ。その人はラルの側でいつも見守っていてくれるじゃろう」
 おじいさんはそう言って羊の後を追いました。
 ラルの目からとめどなく涙が流れていました。
 その夜、ラルは一晩中星を眺めていました。


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